不動産鑑定入門

不動産鑑定士事務所の選び方について

知っておくと役に立つ「不動産鑑定」について

 不動産のことでお困りの時、特に不動産の価格についてお困りの時に、後で後悔しないための不動産鑑定業者の選定法について、また依頼する方法についてお教えします。

 不動産鑑定を知らない方がいるのも無理はありません。不動産鑑定評価という仕事がスタートしてから、未だ半世紀もたっておらず、これまで、一般の方や企業の方々に広く話題になってきたわけでもありません。弁護士・会計士と並ぶ「日本の三大国家資格」の一つでありながら、まだ世の中の認知度は低いと言わざるをえません。

 私たちも、たくさんの方から「不動産鑑定書ってなんで必要なの?」「不動産鑑定会社って何をする会社なの?」あるいは「どのように依頼したらいいの?」といった質問を受けます。そこで、不動産鑑定についてあまりよく知らない方でも理解できるよう、私たち不動産鑑定業者について説明するとともに、具体的に不動産鑑定書の利用方法などを知っていただくコーナーを設けました。実際に不動産鑑定業者へ仕事を依頼する際のポイントなどもまとめて紹介します。

〔これまでの歩み〕不動産鑑定業界も変化に晒されてきました

 不動産の価格に関するいろいろな問題や、トラブルを抱えている方のお手伝いをさせていただくこと。それが不動産鑑定の仕事ですが、この時代の激しい嵐の中で、不動産鑑定業界も変化の流れの真っただ中にあり、苦闘し続けている最中です。

お役所相手の価格評価から始まった不動産鑑定

 不動産鑑定士の仕事が日本に正式に生まれたのは、土地・不動産価格が右肩上がりに高騰していた昭和40年代中頃の好景気の頃です。この当時から、バブル経済が崩壊し始める平成の初めあたりまで、不動産鑑定業界は、官庁や役所を主なお客さまとし、国や都道府県、公団公社の土地の買い入れや街づくりに伴う不動産価格の評価を行うことが主な仕事でした。こうした動きは平成のバブル崩壊まで続きます。

バブル経済の崩壊〜落ち続ける不動産価格の中で

 こうした好景気の日本に突然やってきたのが、平成初めのバブル経済の崩壊です。この時以来、土地の価格は、戦後初めて下がり続けました。日本では、この土地価格の下落により、土地を担保にとっていた銀行の危機が深刻化し、いわゆる不良債権問題が急速に日本経済にのしかかってきます。これに、急いで応えるため私たち不動産鑑定業者の仕事においても、不良債権を大量に処理する必要に迫られ、不動産鑑定業界の組織化、集団化が顕著になりました。

 この平成不況も進んでくると、また新しいニーズが不動産業界に生まれてきました。一言で言えば「不動産と金融の結合」つまり不動産を株や債権のように投資の対象として見ようという動きです。これに呼応するように不動産鑑定業界にも海外から様々な新しい技術や考えが導入されました。

不動産鑑定業者の現状を見つめたうえでの選択を

 こうした新しい不動産の動きは、さまざまな業界を巻き込んで、さらにスピードアップしようとしています。それが新しい不動産業界の波である「不動産証券化」は、たくさんの会社を生み出し、海外からも多くの外資系企業が進出してきました。そして、社会が不安定化し変化するにつれ、倒産、相続、不動産の賃料などの法律問題もクローズアップされ、不動産鑑定に対するニーズはより複雑に、かつ難しさの度合いを高めています。

 こうした中にあって、今、私たち不動産鑑定業者もどうやって、この複雑で多岐にわたるニーズに対応していったらよいのか模索している最中です。一社、一社、それぞれの鑑定事務所がいろいろな方法で努力し、苦闘しながら対処しているのが実情です。

 では、こうした変化の過程にある多くの不動産鑑定業者の中から、皆さまが抱えている問題に満足のいく解決を与えてくれる不動産鑑定業者を選ぶ方法について考えてみましょう。不動産鑑定業者へ依頼するポイントは6つあります。

不動産の価格のことでお困りの方が、不動産鑑定業者に依頼される際の6つのポイント

【ポイント1】高い問題解決能力

 最近の不動産の鑑定評価は、以前のような更地(土地の上に建物がない、ただの土地)の価格を求めるような単純な仕事は少なく、むしろ複雑で込み入った事情を抱えこんだ不動産の評価を依頼されるお客さまが増えています。

 最近、私たちが依頼されたケースでは、不動産の所有者が倒産し、土地と貸しビルはあるのだが、債権者が多いためにその財産を自由に改築、取壊しできず、しかも貸しビルは増改築を繰り返したため、テナントに貸した部分がどこからどこまでか分からないという事例がありました。依頼された方は、その貸しビルを手に入れ、残った土地の方に今流行の超高層マンションを建てる計画を持っていました。そして、弊社作成の評価書を利用して無事融資を受けることができ、計画を達成することができました。このほかにも「土地に差押がかかっているのだが、特に建物のために価格が影響されない場合の評価はできないか」「ビルのオーナーと賃料でもめているのだが、いつから借りたかも、契約した広さはどのくらいかもわからない」といった依頼もあります。
 また、地方にあるテナントが半分以上いないビルの評価など、よほどしっかり理論づけしないと、そのビルの採算に合う賃料を基礎にした説明は難しいかもしれません。経済も、社会も、法律も、とても早いスピードで変化しつつあるこの時代に、多くの不動産鑑定の依頼者は、複雑かつ困難でありながら、どうしても解決して価格を求めねばならない問題を抱えています。

 こうした依頼者にとって重要なのは、その不動産の抱えている問題を乗り越えて評価のできる、一言で言えば“問題解決能力のある”不動産鑑定業者に依頼することなのです。

【ポイント2】信頼できる技術力

 不動産鑑定業者が依頼者のために作成する不動産鑑定評価書は、普通、依頼者の手元に留まらず、転々と他人の手に渡っていくものです。そんな評価書の内容しだいで、あなたの仕事も、もしかしたら信用も左右されるかもしれません。

 たとえば、相続した財産を公平に相続人の間で分けたいという場合。その財産の評価書は、おのおのの相続人、弁護士、あるいは家庭裁判所、これらの誰が見ても納得のいく、信頼できるものでなくてはなりません。
 また、難しいケースのひとつに倒産物件の評価もあります。ギリギリに切迫した倒産の状況下で、緊張した債権者たちを納得させ、異議を差しはめさせないようにさせる評価書を作成するには、しっかりした技術力が求められます。不動産の開発事業で銀行の融資を受けたい。このようなケースでは、銀行の融資担当者、会計士、弁護士あるいは投資家、利害関係者など誰がみても信頼できる内容であることが必要となります。

 あるお客さまのケースですが、ご自分の開発プロジェクトに融資を受けるため鑑定評価を必要としていました。ただし、その案件は、昔の法令によって建てられているため、改築や増築が難しい建物を新しくリニューアルするもので、さらに、お客さまご自身がかなり斬新なアイデアを計画されているため、融資側の審査も当然厳しくなることが予想され、鑑定評価書もそれに応える内容が必要でした。弊社の担当者も実に苦労したようでしたが、お客さまの計画を詳細に分析し、かなり厚みのある鑑定評価書にまとめ上げ、提出しました。心配したように、融資側の審査は厳しかったのですが、無事融資を受けられ、その後このプロジェクトは順調に進んでいます。

 依頼した不動産鑑定の仕事で、問題が解決し、無事あなたの目的が達成されるためには、信頼性の高い鑑定評価書を作成できる“技術力の高い”不動産鑑定業者をお探しになることが必要なのです。

【ポイント3】スピーディーな納期対応力

 鑑定評価を依頼する方にとって特に気になるのが、依頼した不動産鑑定評価書の納期です。いつ鑑定評価書が手元に届き活用することができるかは重要な問題です。

 「裁判で争っている」「うちの会社の決算日が近い」「早く融資を受けたい」。こうした状況下では、一刻も早く不動産の価格を知って、問題を解決することが必要です。特に最近は競争が激しくなり、うかうか時間をつぶしていると、競争相手に先を越されてしまう状況も当然あり得えます。私たちの会社の場合も、時間のあまりない鑑定評価に納期的な面でお応えし、かつ実効力ある鑑定評価書を作成する場合がしばしばあります。普通なら3〜4日、難しい案件でも1週間くらい、それ以上に急ぐ場合でも、依頼した鑑定業者から予定期日通りに鑑定評価書が届いていることが必要です。

 私たちも、納期の件については、誠実な対応に努めております。ある東京の市街地の開発プロジェクトで、依頼者の方は、はじめ広い土地全体を一括して買収するご予定でしたが、都合により一人一人の地主と個別に交渉することとなりました。と言っても、開発計画自体のスケジュールに大きな変更はなく、したがって、鑑定評価書が必要な時期もあまり変わりませんから、鑑定評価を依頼された私たちも、はじめ一冊と思っていた評価書を、短い期間に、続けて5冊も6冊も作成しなくてはなりませんでした。これはかなりハードな作業でしたが、無事に数冊の評価書を納品でき、ほっとした思いがあります。

 もし、うっかり依頼した鑑定評価書が届かない時、あなたの仕事はそのままストップし、誰かに先を越されてしまうかもしれません。そうでなくても、解決の機会を失い、抱えている問題はさらに複雑に、困難になってしまうかもしれません。不動産の鑑定評価を依頼する場合、必ずいつまでに鑑定評価書が手に入るかを問い、“スピーディーな納期対応力”を確かめることが大切です。

【ポイント4】事情に合わせたコスト

 「お持ちの土地・建物で頭を抱えている」「決算や相続で、不動産の値段を知りたい」「節税のために、不動産の価格を証明して欲しい」。悩みや希望はいろいろあるかと思いますが、不動産鑑定を頼もうと考える時、頭を横切るのがコスト。さて、鑑定っていくらかかるのでしょうか?

 私たちも仕事をお引き受けするにあたり、お客さまから鑑定報酬の相談をよく受けます。何か目安がある方が分かりやすいので、弊社では基本報酬なるものを決めています。ただし、私たち不動産鑑定業者は、単に報酬をお願いするだけではなく、できるだけお客さまの負担にならない努力も行っています。たとえば、業界最大手の不動産鑑定会社では、宅地・建物か、農地、林地か、マンションかなどと不動産の種類別に価格基準を設け、依頼時に確認した鑑定評価額に応じ、たとえば56万円、それより上では59万6千円というように報酬額を一律に定めて明確にしています。これ以外に私たち不動産鑑定業者の監督官庁が定めた報酬の基準があり、多くの不動産鑑定業者では、これらの基準を目安に、仕事の特殊性(たとえば、立退料や、ゴルフ場の評価)や依頼の目的などに応じ、具体的な報酬額を決めています。

 鑑定業務の仕事量は膨大で、資料を大量に集め、それを分析しながら官公庁と折衝したり、遠い現地を訪問したり、時にはお客様のために徹夜が何日も続くこともあります。その上、不当な鑑定であると訴えられると、何千万円も損害賠償を請求される可能性もなくはないのです。

 私たちは、このような事情も加味しながら、なるべくお客さまの事情に合わせて報酬額を決めるよう、日々心がけています。

  1. 目的は何か。
  2. どのくらいお困りか。
  3. お客さまの環境は、たとえば、個人の方か、会社の方か。官庁・お役所の方か。

 こうした背景を十分お聞きしたうえで、予算などをお伺いし、なるべくお客さまの負担にならないよう鑑定報酬をお願いしています。土地も建物も、大きいか小さいか、簡単な建て方か複雑な構造か、都会にあるのか地方にあるのかなど、バラエティに富んでいます。そして、それにつれてかかる労力も違ってくるのです。

【ポイント5】バラエティに富んだ処理能力

 今や不動産を巡る問題は複雑化し、多様に広がり、一言で言えばバラエティに富むようになってきています。たとえば、オフィスビル一つとっても「売ったらいくらになるか」など売買のための鑑定評価のほかに、次のようなケースがあります。

  1. 企業の決算対策のための鑑定評価
  2. 節税のための鑑定評価
  3. 投資目的のための鑑定評価
  4. 証券化、流動化のための鑑定評価
  5. ノンリコースローン等のファイナンスのための鑑定評価
  6. 企業が倒産した場合の倒産物件の財産評定

 以上のほか、テナントの間の賃料の争い、賃貸の更新問題、リニューアルした場合の参考価格など、様々な鑑定評価の依頼が考えられます。また、単に土地ひとつとっても、法律により特に高い建物が建てられる場合、反対に低い建物しか建てられない土地、道路につながっていない土地、間口が特に狭い土地、以前に工場があって有害物質が埋まっているかもしれない等々、さまざまな個性があり、こうしたそれぞれの状況毎に、売買、裁判、相続、宅地開発などの多様なニーズが生まれます。

 こうした、さまざまな不動産の状況、多様なお客さまのニーズに応じて、鑑定評価書の内容も適切に対応するものでなくてはなりません。そのためには、その鑑定業者が、幅広い業務をこなし、多様な評価書を作成してきた経験があることが必要です。

 あなたの抱えている問題は、もしかしたら、誰もが解決できるものではないかもしれません。あなたは、ご自分の必要を満たしてくれる鑑定業者を見つけなくてはなりません。そのため鑑定業者には、いろいろバラエティに富んだ仕事をこなしてきた実績も必要となります。不動産鑑定業者へ依頼する時の一つのポイントは、依頼者のニーズに応じてさまざまな仕事をこなしてきた経験のある、いわば“バラエティに富んだ処理能力のある”鑑定業者を探してみることが必要なのです。

【ポイント6】顧客視点による実行力

 依頼される側に立って“親身になって相談に乗ってもらえるか”は、重要なポイントです。
 ある会社の社長さまが、当社ホームページをご覧になり、お問い合わせいただきました。その前に数社の不動産鑑定会社へも打診されており、天秤にかけておられたようです。ご相談内容は、筑波エクスプレスの開通とこのところの地価の上昇で親族から遺留分の追加請求を他社不動産鑑定書付きで受けたためのご相談でした。
 100箇所の複合不動産のご相談内容だったので、お電話では無理と判断し、窓口担当者を伴なって訪問し、直ぐに詳細をお聞きしました。社長さまは最初かなり私どもを警戒されていたようで、なかなか本題に入れないような感じでした。それで、信頼を得るため過去に当社が解決した(扱った)難しく複雑な人間関係が絡んだ数々の不動産評価案件の体験談や、100箇所という大量の複合不動産を限られた時間内に一括処理できる能力を裏付ける当社実績を開示。さらに、極めてリーズナブルな鑑定報酬をはじめとするお客さま重視の姿勢を、親身になってご説明したところ、ほっとされたのか社長さまの目の色が見る見る変わり、今回の案件についてやっとお話いただけるようになりました。後で分かったことですが、いろいろ情報収集された後、5社目に打診された不動産鑑定会社であった当社を、最終的に選ばれたとのことでした。

 依頼者が見込んでいる鑑定評価額が出るのかどうか。依頼者の見込んでいる鑑定評価額が出るのか出ないのか大きな問題です。その実現性によって正式な依頼をしたいというお客さまが増えています。鑑定評価書を必要とされる方はほぼ間違いなく何らかのご事情があるわけで、その解決に役立たない鑑定評価書に高い料金を支払いたくないのは当然です。したがって、正式な依頼をする前、つまり不動産鑑定業者にとっては依頼につながらない可能性がある時点で鑑定評価額の概算を快く出せる鑑定会社は依頼に値する会社と言えます。

 上記の社長さまの場合、やはり100箇所の不動産の鑑定評価額の概算をまず出して欲しいとの要請を受けました。社長さまが見込んでいる評価額でなかった場合、この話はなかったことにして欲しいと言われました。また概算を出すに当たって費用が発生するかと聞かれましたが「無料で大丈夫ですよ」とお伝えしました。

このように、価格面を含め顧客の視点に立ち親身になって対応できる鑑定業者を選ぶとよいでしょう。

以上、説明してきたポイントを改めてまとめました。不動産鑑定会社の選択の際に役立てみてください。

不動産鑑定に依頼される際の6つのポイント

  1. 高い問題解決能力
  2. 信頼できる技術力
  3. スピーディーな納期対応力
  4. ご事情に合わせたコスト
  5. バラエティに富んだ処理能力
  6. 顧客視点による実行力

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